会長からのメッセージ

会長就任にあたって

日本糖質学会会長

梶原 康弘

このたび、2025 年度より日本糖質学会会長を拝命いたしました。伝統と実績を誇る本学会の舵取りという重責を担うこととなり、身の引き締まる思いでおります。会員の皆様におかれましては、日頃より学会活動へのご理解とご支援を賜り、心より御礼申し上げます。 本学会は、1978 年に設立された炭水化物研究会を前身とし、1989 年に現在の学会組織へと発展して以来、糖質科学の基礎から応用、医学分野に至る幅広い研究領域を牽引してまいりました。化学と生物学を両輪とする学際性、そして若手研究者、女性研究者、そしてベテラン研究者がバランスのとれた比率で参加し、自由闊達に議論できる場を大切にする姿勢は、長年にわたり本学会の大きな強みであり続けています。 2025 年を迎えた現在、糖質科学を取り巻く環境は大きな転換期にあります。ヒューマングライコーム研究の本格的な進展、AI・情報科学との融合による解析技術の高度化、さらには創薬・診断・材料科学への社会実装が急速に加速しています。一方で、研究環境の国際競争は一層激しさを増し、若手研究者の育成や国際的な人材循環の確保は、学会の重要課題となっています。 こうした中、本学会の最も重要な役割は、第一に年会を中心とした研究交流の場をさらに活性化させること、第二に次世代を担う若手研究者を継続的に支援すること、そして第三に国際連携を通じて日本の糖質科学の存在感を世界に示していくことにあると考えています。学生会員支援、奨励賞・優秀講演賞制度、国際学会参加支援など、これまで築かれてきた取り組みを大切にしつつ、時代に即した形へと発展させていきたいと存じます。 また、近年、遺伝子を自在に操作できる技術や、巨大なデータベースを統計的に処理し新たな予測が可能となるAI 技術の劇的な進歩があります。このような環境下で糖質化学、糖鎖生物学をどのように融合また独自に発展させていくか大きなステップが求められます。特に若い研究者の方には、できる限り学際的な国際学会にも参加して欲しいと思います。そして他分野の立場から糖質化学、糖鎖生物学を俯瞰しこれまでの研究を継承しつつ、次の20年で新たに出現するであろう新しいテーマ、手法を想像しながら独創的な研究を展開していただきたいと思います。 糖鎖は細胞表層、タンパク質表層を覆い、なぜ糖鎖がその場所にあるのか、なぜ無数に密集しているのか、いまだ誰も明確な説明ができないと思います。また、一部を除き、それら大半の糖鎖に対する受容体が見つかっているわけではないにもかかわらず、糖鎖は、その存在がなくなると致死、あるいは重篤な症状に至るという不思議で、そして重要な分子です。糖質化学、糖鎖生物学はこの生命の不思議なシステムを解明するために、これまでにない新しい手法、アイデアを駆使しさらに前進する必要があると考えております。

2025 年は、学術界全体において「社会との対話」や「研究成果の可視化」が強く求められる年でもあります。糖質科学は、生命現象の根幹に関わる基礎科学であると同時に、医療・環境・産業へと展開可能な高い潜在力を有しています。本学会としても、独創性に富んだ基礎研究を尊重しながら、社会との接点を意識した発信を強化していく所存です。 最後になりましたが、本学会は会員一人ひとりの研究への情熱と相互の信頼によって支えられています。今後も、分野や世代を超えた交流の場として、皆様にとって「参加してよかった」と実感できる学会であり続けられるよう、微力ながら全力を尽くしてまいります。会員の皆様のますますのご健勝とご活躍を祈念するとともに、引き続きのご支援・ご協力を心よりお願い申し上げます。